講義?ワークショップ等の報告
第3回「高度専門キャリア形成論Ⅰ?Ⅱ」の報告です
2013.07.08
第3回高度専門キャリア形成論Ⅰ?Ⅱが、7月4日(木)に開催されました。
「学位取得者が水族館で何ができるか ~営業から研究まで~」
春日井 隆 氏 (名古屋港水族館職員)
最初に、瀬川 進先生から春日井氏の略歴について紹介がありました。瀬川先生は、春日井氏が博士号を取得した当時の指導教員だったことから、春日井氏の研究内容等についても触れられていました。
春日井氏が就職された頃は、水族館に就職を希望する学生は少なかった
春日井氏は、北海道大学を卒業した後、名古屋港水族館に就職されました。今日まで同じ水族館に勤務しながら、様々な仕事を経験したこと、平成25年3月には東京海洋大学で博士号を取得されたこと等についてご自身から紹介がありました。
日本には水族館が大小合わせて約100園館あり、北米や欧州の国と比較しても多い方だそうです。また、設立形態の違いについて、鴨川シーワールド、葛西臨海水族館、沖縄美ら海水族館、しながわ水族館等々の有名水族館を例にして説明されていました。
華やかそうな仕事だが、実は毎日毎日同じことを繰り返せる忍耐力が必要
続いて、名古屋港水族館の各業務(飼育管理、教育、研究、企画、設備管理、広報、一般管理)について、それぞれ現場の写真を示しながら詳しい説明がありました。また、名古屋港水族館は、南極オキアミやベルーガの繁殖に世界で初めて成功したことで有名であり、産卵や出産の際には職員が総出で観察するそうです。また、赤ウミガメの観察では、海洋大の研究会が協力しており、どこの水族館も繁殖の研究には力を入れているそうです。
春日井氏が名古屋港水族館で経験した仕事は、飼育係から始まり、管理?広報、ウミガメや魚の飼育、そして広報?宣伝と様々な業務に関わり、現在はペンギンの飼育を担当しているそうです。名古屋港水族館で最初の仕事が海苔の養殖担当で苦労したこと、また入職して3年目頃に徹夜でウミガメの産卵を見ることができて感動したこと等に触れられました。アマモの水槽展示でも苦労したそうですが、その過程でヒメイカの産卵行動に出会い、他の4人と共同研究を行って『新鮮イカ学』を出版したそうです。
春日井氏にとって、「水族館での研究は、仕事ではなく趣味?」の意味は
水族館の役割は、4種類(レクリエーション、教育、研究、自然保護)だそうです。水族館の展示を維持するためには魚たちの犠牲も多く、そのことに対する世間の批判が強いそうです。従って、これからの水族館には、教育や研究の分野で成果を残すことが求められていると述べられました。しかし、水族館での研究は、職員が日々の業務で多忙なことから、論文として纏めることが難しい現実があるようです。組織立って研究への支援は無く、個人が自分の時間と費用で研究を継続するしかないそうです。春日井氏は、今後は大学等と協同して研究を進める方向性に期待したいと述べられ、『研究する水族館』猿渡敏郎?西源二郎共著の本を紹介されました。
最後に、水族館で働きたい人たちへのアドバイス
最近は水族館への就職が人気のため競争率が100倍以上な反面、飼育係を目指して就職しても、色々なことをやらなければならない覚悟も必要だそうです。水族館で働くには相当の覚悟が必要で大変な仕事のようですが、それでも水族館で働くことの楽しさと感動もたくさんある? と力説されていました。
名古屋港水族館には修士号取得者も多く、また他の水族館では博士号取得者もいるので、大学院卒でも水族館への就職を希望する方はぜひチャレンジして欲しいと締め括られました。