講義?ワークショップ等の報告
第10回「高度専門キャリア形成論Ⅰ?Ⅱ」の講義報告です(H26年度)
2015.02.03
平成27年1月29日(木)、bob博彩公司_申博体育在线-投注*官网?白鷹館2Fで、平成26年度第10回高度専門キャリア形成論が開催されました。今回は、第2回ワークショップ+懇談会としての開催でした。
『持続可能な社会を目指して』
~?環境科学の総合コンサルタントとして ~
細田昌広 氏 (いであ株式会社 代表取締役社長)
王 琦 氏 (いであ株式会社水環境解析部 研究員)
?
神田副室長の司会進行で、第2回ワークショップが開始されました。
最初に、神田副室長から本日の講演をお願いした両氏に「お忙しい中を、お時間を頂き有難うございました」とお礼の言葉が述べられました。
?
いであ株式会社は昭和28年創立
続いて、細田氏の登壇となり、いであ株式会社の会社紹介がありました。
いであ社の前身である新日本気象海洋株式会社は、天気の情報を提供する初の民間会社として昭和28年に設立された。事業概要は、「社会基盤の形成と環境保全の総合コンサルタント」であり、いであ(IDEA)の社名は、ビジネスターゲットを表現している。売上高の9割は官公庁と地方自治体が占めており、今後は民間の売上を増やしていきたいと考えている。
?
細田氏の経歴とこれまでに手掛けた技術者としての仕事
細田氏の略歴と、これまでに手掛けた仕事の技術的な概要が紹介されました。
旧東京水産大学の大学院を卒業後、新日本気象海洋(株)に入社した。入社後は、主に数値シミュレーションによる海域の流動予測や水質拡散予測等の環境アセスメント事業に従事した。また、六ヶ所村の放射線核種の環境拡散予測モデルを開発する仕事にも携わった。どれも複雑で難しい仕事で、現地調査や実験等の繰り返しに長い時間を掛け、非常に大変だった。並行して、松山先生の研究室で海洋物理と流動モデルを学んだことから、水環境に関わる様々な数値シミュレーションを開発してきた。
羽田空港の再拡張事業や有明海の諫早湾潮受堤防の事例を示して、流動モデルによるアセスメントの仕事内容について詳しく説明がありました。
いであ社は技術開発に力を入れている
「いであ社は技術開発に力を入れているのが特色」と述べて、4つの研究所の目的と役割について紹介がありました。続いて、今後のビジネス展開として、防災?減災、アセットマネージメント、地球温暖化、生活環境の安全?安心等々のテーマについて、いであ社の研究事例がそれぞれ具体的に紹介されました。
いであ社は技術士の育成にも力を入れている
官公庁の発注方法が、随意契約から価格競争方式(価格重視)やプロポーザル方式(技術力重視)、或はその両方を評価する方式へと変化していることに関連して、いであ社の技術者育成について紹介がありました。
いであ社は技術力で勝負したいので、プロポーザル方式に応募したいが、応募要件では技術士やRCCを持つ管理技術者が必須とされている。現在は、技術士が一番高いランクに位置付けられており、博士を持っていても入社後に技術士を取得してもらう必要がある。従って、有資格者の育成には特に力を入れており、「技能塾」と呼ぶ勉強会を通年で実施している。また、技術的な優位を保つために、技術開発も重要である。いであ社は、資格取得に意欲的で、語学力があって海外事業にチャレンジする意欲がある人材を求めている。「私はこれしかできない」ではなく、専門以外にもチャレンジできることが必要である。
「地球温暖化や防災等々で課題が山積みであり、皆さんの研究で社会が少しでも良くなることを期待している」と述べて講演が締め括られました。?
《質疑応答》
続いて質疑応答に移りました。
質問1:海外で事業の実績はあるか? また、どこの国が多いか?
JICAの仕事も多く、環境問題として中国に実績がある。しかし、将来的には海外に合弁会社を設立し、その国の予算で仕事をする方向にシフトしたい。(細田氏)
質問2:技術士の取得に対する支援は何かあるか?
まず実務経験が必要となり、その上で論文の書き方等を先輩達が指導する。いであ社では、技術士の取得研修には力を入れており、これ迄に沢山の社員が取得することができた。(細田氏)
続いて、王さんの登壇となりました。
長期インターンシップ先のいであ社に入社
王さんは、2年前にインターンシップを修了後、そのまま研修先のいであ株式会社に入社されました。
現在は、インターンシップの時と同じ水環境解析部に所属している。水環境解析部では、海洋、河川、湖沼のデータ解析および数値モデルを使った環境の予測と評価をしている。私自信は、主に沿海域の観測データの解析と伊勢湾のシミュレーションの仕事に従事している。
?
伊勢湾シミュレータの紹介
王さんが関わっている、伊勢湾シミュレータの技術的な内容が紹介されました。?伊勢湾シミュレータは、貧酸素に着目して、より細かく忠実に再現している点が他のシミュレータと違うところだと説明があり、一つひとつの機能について詳しく説明がありました。
名古屋港の新土砂処分場の建設に際して、漁業にどの様な影響を及ぼすかを評価するためにモデルを作った。約800のパラメータがあり、様々な項目でシミュレーション結果と実際の観測値を比較し、大学の先生方にも見て頂きながら、再びパラメータの調整をすることを繰り返す複雑な作業となっている。信頼性の高いシミュレータとするために、日々努力をしている。
今後は、色々な業務を経験して、様々な知識や技術を身に付けていきたい。まだまだ男性の多い分野だが、できれば国内だけでなく、海外でも活躍できる女性技術者を目指していきたい。
「我々の仕事に興味を持った方は、是非いであ社に来て欲しい。そして、一緒に頑張っていきたいと思っている」と述べて、講演が締め括られました。
《質疑応答》
続いて質疑応答に移りました。
質問1:今後のキャリアとして、どの様な仕事に取り組んできたいと考えているか?
できるだけ沢山のシミュレータに触れて、沢山の経験をしたいが、今は簿記の勉強もしてみたい。将来は、当社が力を入れている海外事業にも力を発揮できたら良いと思っている。(王 さん)
質問2:昨年関わっていたダイオキシンの研究についての論文は書いたか?
専門は海洋物理学であり、化学の分野で論文を書く程には至っていない。しかし、良い経験をさせてもらったと思っている。(王 さん)
質問3:いであ社で、技術者が論文を書くペースはどの位の期間か?
発注者に提案して、1年間ほど掛けて論文を書くことが多い。(細田氏)
質問4:大学院でやったことは企業での研究にどう役に立ったか?
乗船実習では、海の雄大さを実感しながら、これからの将来を考えることができた。留学生としては初めて南極観測にも行かせてもらったが、とても良い経験になった。(王 さん)
質問5:大学院で何を身に付ければ企業で役に立つか?
如何にして研究に興味を持つか、それをどう横に広げていけるか、という考え方ややり方は企業でも同様に役に立つ。(細田氏)
質問6:どうして日本で就職活動をしたのか?
初めは大学の先生になろうと思っていたが、社会に出てもっと広い視野で自分を見つめている方が合っていると思うようになった。日本が好きだから、日本で就職して長く居たいと考えている。(王 さん)
神田先生から、本日の講演について両氏にお礼が述べられました。
最後に、小川室長から、「いであ社の研究所を訪問すると、施設内が綺麗で、誰もが挨拶をしてくれる。人と人との繋がりを大事にしている企業だと感じた。そして、若い人を育てる企業だと感じた」と、いであ社の印象を話されました。
最後に、講演者の両氏に再びお礼が述べられました。また、参加して頂いた企業の方々、そして学生達にも感謝の言葉が述べられて閉会となりました。
引き続いて懇談会が開催されました。
以上