講義?ワークショップ等の報告
第6回「高度専門キャリア形成論Ⅰ?Ⅱ」および第1回「ワークショップと懇談会」の報告です(H26年度)
2014.09.24
平成26年9月18日(木)、bob博彩公司_申博体育在线-投注*官网?白鷹館2F多目的スペースⅠで、平成26年度第6回高度専門キャリア形成論および第1回ワークショップと懇談会が開催されました。
司会進行役であるキャリア開発室の神田副室長から、本日の講義とワークショップについて紹介がありました。
博士後期課程を修了した後、社会で活躍する様々なルートがある。開発コンサルタントも有力な対象であり、寺島裕晃氏に講演をお願いした。 また、櫻井恵子さんには長期インターンシップの体験報告をしてもらう。
最初に、キャリア開発室の小川室長から、開会の挨拶として来賓の企業の方々にお礼の言葉が述べられました。
●三陸復興支援プロジェクトでの、コーディネーター育成の取り組みが紹介されました。
研究者を支援するコーディネーター職も、大学院の新しいキャリアと考えている。高度専門キャリア形成論も、学生の皆さんに、色々な活躍の場を知ってもらうという趣旨で企画している。また、学生と企業との交流は大事で、ワークショップにも積極的に参加してほしい。
第1部 高度専門キャリア形成論
『国際協力の業務について』
? ~ 開発コンサルタントの仕事 ~
寺島?裕晃 氏(アイ?シー?ネット株式会社代表取締役社長)
●アイ?シー?ネット株式会社の寺島裕晃氏が登壇されました。
?ODA(Official Development Aid)とは政府開発援助のことで、発展途上国へ行って色々な手助けをする。今日は、水産協力分野の仕事について説明する。国際協力は、政府間で協力を合意した後、JICAでどの様なプロジェクトにするかを計画?立案する。実際に現場で働くのは、民間企業の開発コンサルタントや省庁の人達で、大学の先生も協力することがある。ODA予算は年間約1.5兆円で、国家予算の1%弱を占め、日本の便益を守るという側面がある。
●続いて、実際の業務内容について紹介がありました。
①最初に、セネガルでの事例が写真で紹介されました。
最近は漁獲量が減り、資源管理がうまくできていなかった。日本は調査船を供与し、現地の人たちと調査を実施した。この際に、資源調査の方法を教えることも大切である。最終的には、その国の水産や資源管理の政策プランを作るとこまで行けば成功と言える。
②次に、フィリピンでの事例が写真で紹介されました。
ミルクフィッシュの養殖の生産性が悪く、水質悪化も問題となっていた。このため、養殖行政の提言を作ることが最終的な目標であった。実際には、現地担当者達にやる気がなかったり、養殖事業が大赤字だったりと問題が山積していた。
③次に、キリバスでの事例が写真で紹介されました。
EEZが非常に広く、日本にとっては、マグロ等の漁に大切な国である。海水温の上昇等によりサンゴが少なくなり、水産資源量も少なくなってきている。これは、大洋州の国々では共通した問題でもある。このため、漁協による資源管理をどうするか等のワークショップをやった。
④その外にも、チュニジアやミンダナオでの事例が写真で紹介されました。
開発コンサルタントは、日本の活動の広報、学会発表、世界のODA関係者や世界銀行との情報交換等々で会議にも出席する。これまでは、漁獲量を上げることが目標であった。現在では、資源管理をしながら、節度のある獲り方で、現地の人の生計をどう向上させるかが重要になっている。
●「国際協力における、水産分野の範囲は広い。海洋大でやっていることは、水産系開発コンサルタントとしてどの分野でもニーズはある」
最初は国際協力には興味が無く、大学卒業後は民間調査会社に就職した。大学院に戻ってから、JICAの専門家派遣で、モーリシャスの技術移転指導や政策提言に参加したことをきっかけに、現在の会社に就職した。
現場経験が必要なので、水産系の大学を出ても直ぐに開発コンサルタントになる人は少ない。実際には、千差万別なキャリアパスを経ているようだ。その時は回り道をしたように思えるが、その経験があったからこそ今の活躍ができているのだと思っている。
開発コンサルタントに求められる能力や人材像として、やはり最初に語学力が挙げられる。そして、それ以上に大事なのはコミュニケーション能力だ。自分の思っていることを的確に相手に伝え、相手の思っていることを的確に理解することはとても大切だ。そして、次に専門分野の知識と経験が挙げられる。最後に、その国の人達を思う気持ちや、良くしたいと思う情熱が無いと難しいと思っている。熱い思いについては、櫻井さんが、この後の体験談で語ってくれると思う。
●引き続いて、質疑応答の時間が取られました。
質 問:日本にいる開発コンサルタントの人数は?(神田先生)
[寺島氏] 正確な人数は分からないが、会社は大小約200社ある。
第2部 ワークショップ(長期インターンシップ報告)
『技術協力プロジェクトにおける
開発コンサルタント業務を通じての学び』
櫻井?恵子 さん(本学博士後期課程2年)
●続いて、櫻井さんの登壇となりました。
アイ?シー?ネット社で、今年3月まで長期インターンシップに参加した。研修場所はマダガスカルで、仕事は『研修管理と業務調整』だった。
マダガスカルでは、火災や伐採によって、天然林が9.3%/年で減少している。すると土砂が下流域に流出するようになり、稲作地帯の灌漑がうまく機能しなくなって、稲作生産に悪影響を与える。上流域の生活は貧しく、安易に伐採を止めさせることはできない。この状況に、どうアプローチするかというプロジェクトだった。
●長期インターンシップでの仕事について、写真を示しながら紹介がありました。
●「新たな知識を得ることは、新しいアイデアが生まれる原石と気付いた」
インターンシップを通じて学んだことは、『謙虚に学ぶこと』だった。二つ目は、コミュニケーションは重要なツールであるということ。三つ目は、できる目標ではなく、難しい目標を設定すること。四つ目は、原則に立ち返るということ。最後に、スピード感のあるPDCAサイクルを、恐れずにどんどんどんどん回して行くこと。これらは、ある部分では研究にも通じることだと思っている。
●博士号を持った開発コンサルタントとして...
今後は、語学力(英語とフランス語)を強化したい。そして、ある国の経済発展に、責任ある立場で関与するために、博士号の取得に注力したい。学ぶことの喜びを意識して常に学び、情報を幅広く入手し続けることを心掛け、積極的な自己開拓をしていきたい。博士号を持った開発コンサルタントとして、国際協力分野において、研究と実用を結びつける役割ができるのではないかと思っている。
●神田先生から、面白く、頼もしい発表に感謝が述べられました。
●引き続いて、質疑応答の時間が取られました。(一部のみ掲載)
質 問:マダガスカルでは他国からの援助との調整はどうしているか?
[寺島氏] 5年前の政変から、日本がトップドナーとして第一次産業への支援を開始している。
質 問:学部卒業後に何故、青年海外協力隊に入隊しようと思ったのか?
[櫻井さん] 入学時は水族館に勤めたかったが、テレビ番組で初めて国際協力を知った。途上国とはどんなところで、どういう仕事ができるのかを見るために協力隊に参加した。
質 問:参加後はどんな影響があったか?
[櫻井さん] 語学力が大事なので留学しようかとも思ったが、日本の専門家として海外に行くのに、日本の水産業について知らないのは恥ずかしいと思って海洋大に入った。
質 問:マダガスカルに3か月間行って、一番辛い、難しいと感じたことは何か?
[櫻井さん] コミュニケーションで躓くことがよくあった。『こうしてあげたい背景には、こういうことがある』ということまで伝えられなかった。語学力を身に付けたいと、そのときに思った。
●質疑応答に続いて、神田先生から、アンケートへの記入依頼と次回講義の案内パンフレットが配布されました。
●最後に、講義とワークショップの閉会挨拶として、竹内先生から講演者にお礼が述べられ、配布資料の説明と次回の講義内容を紹介して閉会となりました。
第3部 懇談会
●引き続いて、懇談会の会場に移り、企業の方々と学生たちの意見交換が活発に行われました。
以上