品川?越中島キャンパス大学院海洋科学技術研究科
大学院海洋科学技術研究科は、博士前期課程と博士後期課程の区分制博士課程とし、先端領域を切り拓く自立した高度専門職業人等を養成します。さらに、国立研究開発法人水産研究?教育機構、国立研究開発法人海洋研究開発機構、国立研究開発法人海上?港湾?航空技術研究所と連携して、教育研究の一層の充実と大学院生の資質向上を図っています。
【受賞?表彰】本学大学院生が「International Symposium on Reproductive Physiology of Fish」で最優秀口頭発表賞および最優秀ポスター賞を受賞しました
【受賞概要】
令和5年5月15日~19日にギリシャのクレタ島で開催された第12回のInternational Symposium on Reproductive Physiology of Fishにおいて、吉崎研究室の天野雄一さんと守谷奈津子さんが最優秀口頭発表賞を受賞し、山川宏樹さんが最優秀ポスター発表賞を受賞しました。本シンポジウムは4年に一度、世界各地から魚類の繁殖生理学の研究者が一堂に会する当該分野では最も権威のある国際会議になります。今回は口頭発表とポスター発表、各2名ずつ、計4名が表彰されました。
?
【受賞者】
天野雄一(東京海洋大学 大学院海洋科学技術研究科 博士後期課程3年)最優秀口頭発表賞
守谷奈津子(東京海洋大学 大学院海洋科学技術研究科 博士後期課程2年)最優秀口頭発表賞
山川宏樹(東京海洋大学 大学院海洋科学技術研究科 博士後期課程2年)最優秀ポスター発表賞
?
【受賞研究】
天野学生
『Using Surrogate Fish for Eradicating Invasive Fish: Can Surrogate Triploid Rainbow Trout Mate with Their Wild-type Counterparts and Produce Lethal Hybrids?』(代理親魚を用いた外来魚の根絶: ニジマス代理親は野生魚と自然交配し、致死性雑種を生産可能か?)
水圏生態系保全における重要な課題である外来魚問題を解決するため、雑種致死現象と代理親魚技法を組み合わせた新たな外来魚根絶法の開発を目指しました。本研究では、ニジマスとの雑種が致死となるブラウントラウト精子を代理生産するニジマス代理親を生産し、その自然交配を効率化しました。その結果、野外環境下で代理親の雄と野生魚の雌が自然交配可能であること、致死性雑種を自然交配にて誘導可能であること、そしてその結果として代理親が自然交配によって野生魚の再生産を阻害可能であることを初めて示しました。本研究は、外来魚問題解決のために必要とされる、「低密度化した外来魚個体群を根絶に追い込む最後の一手」の確立にむけた重要な基盤情報となりえます。?
守谷学生
『Luteinizing hormone gene over-expression in pre-pubertal rainbow trout can induce sperm production within a short period』(若齢ニジマスにおける黄体形成ホルモンの過剰発現は精子生産を短期間で誘起可能である)
超早熟宿主を用いた代理親魚技法による高速育種法の構築を目指し、サケ科の中では世代時間が比較的短いニジマスを材料に、黄体形成ホルモン遺伝子を過剰発現させることでその超早熟化を試みました。その結果、通常のニジマス雄個体では成熟までに2年を要するところ、半年で成熟する超早熟ニジマス雄個体を世界で初めて作出することに成功しました。さらに、この超早熟ニジマスを代理親魚技法における宿主に用いたところ、ドナー由来のニジマス精子を約半年で生産し、その次世代を作出することに成功しました。本研究で作出した超早熟ニジマスは目的種の精子を短期間で生産するための宿主として有用であり、育種の飛躍的な加速に貢献できると期待されます。
山川学生
『Functional Sperm Production from Frozen Germ Cells of a Fish on the Verge of Extinction: The Case of the Tokyo bitterling』(絶滅危惧魚類の凍結生殖細胞から機能的な精子を生産する: ミヤコタナゴの例)
絶滅危惧ⅠA類かつ天然記念物として保護されているミヤコタナゴを絶滅から救うため、生殖細胞凍結による遺伝子資源の半永久的保存と代理親魚技法を組み合わせた保全技法の確立を目指しました。ミヤコタナゴ精巣の凍結保存条件を至適化した後、解凍した精巣から得られた生殖細胞を宿主となるアブラボテに移植した結果、雄宿主がミヤコタナゴ精子、雌宿主がミヤコタナゴ卵を生産し、これらを受精させることで、凍結細胞由来のミヤコタナゴの生産に成功しました。本技術の確立はミヤコタナゴをはじめとした絶滅危惧種を守るための強力な手段となりえます。