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国立大学法人 東京海洋大学

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令和4年度3月期 卒業?修了される皆様へ(学長式辞?来賓祝辞)

イベント 在学生の方

令和5年3月期東京海洋大学卒業?修了における学長式辞
(学部?海洋科学専攻科?大学院)

44273b674c8e048b37ae1961cb9b526c.jpg 海洋科学部、海洋生命科学部、海洋工学部ならびに海洋資源環境学部を御卒業の皆さん、海洋科学専攻科を修了の皆さん、大学院博士前期及び後期課程を修了の皆さん、本日は誠におめでとうございます。長い間私たちの日常生活に影を落としてきた新型コロナウイルス感染症対策にも終わりが近づき、皆さんの多くは、雨上がりの空から一筋の光が差してくるような、清々しい気持ちに満たされているのではないでしょうか。満開の桜も皆さんの新しい門出を祝っているように思えます。本来であれば、ご家族やご親戚の方々にもご出席いただくところですが、毎年利用していた学外の会場が昨年9月末に営業を終了しましたので、今年度はこの越中島会館講堂で複数回に分けて学位記授与式を実施することにしました。この講堂の広さで長時間の式典を実施することは、感染防止の観点から若干の不安もありますので、入場者数を制限し、大幅に簡素化した、短時間の学位記授与式としましたことをご容赦ください。

 さて、皆さんはこの3年間、新型コロナウイルス感染症に起因する数多くの試練に遭遇し、思い通りにならない日々を過ごしてきました。想像していた学生生活とはかけ離れた毎日だったと思います。そのような状況の中で、初志貫徹し、卒業?修了という一つの大きな目標を達成された皆さんには、心から敬意を表したいと思います。人生の新しいスタートラインに立つ前に、頑張ってきたこれまでの日々を振り返り、今日はしっかりと自分自身を褒めてあげて下さい。そして、この喜びをご家族や友人と伴に分かち合って欲しいと思います。

 ところで、3年間にわたる新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって、私達を取り巻く社会は大きく変化しました。オンライン授業、テレワーク、遠隔診療、デジタル通貨など、身近なところでのデジタル技術によって、革新的で不可逆的な変化を私たちは経験してきました。最近注目されているもう一つの大きな変化として、ビッグデータに基づくAI技術の目覚ましい進歩が挙げられます。最近では、OpenAI社のChatGPTやマイクロソフト社のBingのAIチャット機能などが話題になっており、先週のニュースでは、GPT-4が米国の統一司法試験の上位10%に相当する成績をとったと大きく取り上げられていました。私も好奇心に駆られて、ChatGPTを使ってみましたが、AIが人類の知能を超える技術的転換点、いわゆるシンギュラリティが直ぐそこまで来ていると脅威を感じました。

 実際のAI技術の詳細を知りたいと思っていたところ、3月初めに、国立情報学研究所が定期的に開催しているサイバーシンポジウムにおいて、京都大学の黒橋禎夫教授による「ChatGPTの仕組みと社会へのインパクト」という講演を拝聴する機会に恵まれました。その結果、シンギュラリティの到来についてはある程度安心することができました。少し説明すると、使われている技術はニューラル自然言語処理で、コーパスと呼ばれる自然言語の大規模なデータベースを学習し、回答の文章は最も使用頻度の高い単語の連なりから構成されるようになっているそうです。それぞれの単語は1,000から10,000次元のベクトルで表現され、人間の言語能力をはるかに超えた膨大な意味空間の中で、Attention機構によって分類精度の高い文章が作られるそうです。そのため、質問に対する回答も自然な文章になり、コンピュータプログラムの作成も、コンピュータが理解しやすい言語を作成するという意味で得意なのだそうです。一方で、学習したコーパスに誤った情報や不確かな情報が混ざっていれば誤った回答をしてしまう可能性があり、「知りません」とは言えず、勢いで何かを答えてしまうHallucinationと呼ばれる問題点などがあることも知りました。これらの問題点から、人間の優越性を再確認できたようで安心しましたが、私たちは、大勢の人が正しいと言っていることを正しいと信じこんでしまいますし、不確かなことを勉強してしまうと真実を見誤ってしまうことがあります。また、自分が一生懸命勉強してきたことに対して「知りません」とはなかなか言えない性質を持っていることも事実です。このように良く考えてみると、私達人間も全く同じであることに気が付きました。

 ここで、AIと人間の違いについて一つ強調したいことがあります。私たちは何を学ぶかを自分自身で取捨選択することができます。結論が正しいかどうか、あらゆる角度から検討し直すこともできます。皆さんには、真実を見極める力を身に付け、自分が正しいと信じる目標に向かって、謙虚な姿勢で多くのことを学び、これから社会に出て遭遇する様々な課題に取り組んで欲しいと思います。そしてもう一つ、人間がAIよりも決定的に優れている点として、データベース化されていないものから学ぶことができることを挙げたいと思います。見たり聞いたり、匂いを嗅いだり触ったり、私たちは森羅万象全てから、あらゆる形で何かを学び取ることができます。それに加えて、東京海洋大学で学んだ皆さんは、自然の摂理を解明する研究手法と、独自に得た知見をデータベース化する技術、すなわち論文を書くということを学んできました。AIが本当に社会に役立つ存在となるためには、コンピュータ技術者やコンピュータ?プログラマーだけではなく、現場においてまだ誰も遭遇していない問題と対峙し、何とか最適解を導き出す、数多くの技術者や研究者が必要であると思われます。皆さんが活躍する場は有りとあらゆるところにあります。皆さんには是非、AIを自分の助手のように自在に使いこなし、AI?ネイティブ世代の先陣を切って欲しいと思います。

 皆さんはこれから広大な海に漕ぎ出していきます。数々の課題に向き合い、困難を感じた時は是非、指導教員の先生や、東京海洋大学校友会にコンタクトしてください。本学はいつでも、また、いつまでも皆さんをサポートしたいと思っています。皆さんの元気に満ち溢れた笑顔に再び会えることを期待しつつ、式辞とさせて頂きます。

                            令和5年3月24日           
東京海洋大学長 井 関 俊 夫   

    

祝   辞

7c86d451b9ed5f814533b5ab1b272b34.jpg  本日ご卒業される皆様、誠におめでとうございます。
今年度の学位記?修了証書授与式も新型コロナウイルス感染症拡大防止を考慮し規模を縮小しての開催とのこと、皆様のお気持ちをお察し申し上げます。

 日本は、海に囲まれた海洋国家であり、EEZを含めた領域は世界で上位の大国です。その領域は、海洋?水産資源に加えて、海底にはメタンハイドレードやマンガン鉱等鉱物資源の宝庫であり、世界中がそれら資源に注目し様々な取組みが行われ、その将来性は計り知れないものがあります。海との関わりは切っても切れない関係にあり、海洋、海事、水産について学ぶことが出来る日本で唯一の海洋系大学である東京海洋大学で学ばれた知識と経験は、あらたな地平を開くことにつながるものです。

 また、東京海洋大学の前身である東京商船大学、東京水産大学はいずれも100年以上の歴史を有する大学で、それらの卒業生で構成された同窓会は、他の大学の同窓会に比べ、強い絆で結ばれ、非常に頼りになる存在です。

 コロナ過を契機に、世界中のあらゆる国において日常生活や産業構造のあり方の見直し等、歴史的な大変革が迫られております。ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻は、全世界に大きな影響を与え、あらゆる面においては不安が広がり、激動の時代を迎えております。

 これまで学ばれた知識と経験を糧に新たなる社会生活においてご活躍されることを期待致しますとともに、皆さんは東京海洋大学卒業生であることを誇りに社会で、世界で活躍されることをご祈念いたします。

 最後に、本日ご卒業される皆様方の晴れの門出をお祝い申し上げますとともに本日ご参集の皆様方の益々のご発展を御祈念申し上げ御挨拶とさせていただきます。

 令和5年3月24日       
衆議院議員 小野寺 五典  

祝   辞

hiratsuka.jpgのサムネイル画像 一般社団法人海洋会会長の平塚です。同窓会を代表して一言お祝いのご挨拶を申し上げます。本来なれば式典に出席して皆さんの前で祝辞を述べるべきところ、新型コロナウイルス感染拡大の防止対策から、誠に残念ながらそれが叶いません。このような形でのご挨拶となることを御赦し下さい。

 本学の所定の課程を終え大学や専攻科、乗船実習科を卒業される皆さん、また、大学院を修了して学位を授けられる皆さん、本日は誠におめでとうございます。心よりお慶び申し上げます。皆さんの積年の努力が結実し、本日、この日を迎えることになりました。卒業生、修了生の皆さんにあっては、充実感、達成感に満ち、また若干の安堵感が混じった、そんな瞬間ではないかと思います。また卒業生、修了生のご家族の皆様にあっては、この日を待ちわびておられたことでしょう、お喜びもひとしおであろうと思います。重ねてお祝い申し上げます。

 2019年末に中国で初の罹患記録が報じられてからこの3年の間、新型コロナウイルスのパンデミックは人類社会に大きな災禍をもたらしました。この2023年(令和3年)3月半ばまでに世界の感染者は約7億人を数え、既に700万人近い死亡者を出しています。感染拡大を防止するため人々の接触と移動が大きく制限されました。卒業生、修了生の皆さんのキャンパスライフにも大きな影響があったものと思います。対面での講義や実習?実験などが難しくなり、一時期にはオンライン授業に振り替えるといった措置がとられましたが、大学祭や各種のイベントの中止など、学友と共有する時間、空間も制限されました。学生時代、また青春期にこのような事態に遭遇した皆さんのご苦労や不安はいかばかりだったかとお察しします。

 ただ、このような困難な時機にあっても皆さんは所期の目的であった卒業、修了を勝ち取られたのです。それは大いに誇りとし、また、これからの長い人生の中での糧として下さい。また、先ほど皆さんのご家族にもお祝いの意をお伝えしましたが、皆さんが今日の日を迎えるにあたっては、ご両親やご兄弟、おじいちゃん、おばあちゃん、ご縁戚の方々などの支えが欠かせませんでした。皆さんの恩師である教員をはじめとする大学の関係者の方々のサポートもありました。今日は、皆さんが自らの学業成就をお祝いするとともに、全ての関係者へ感謝する日でもあります。


 さて皆さんがこれから歩んで行こうとする社会で、重要なカギを握るのは環境問題です。21世紀も20年以上が過ぎた今、前世紀からの人類の課題である環境問題の解決は喫緊のものになってきました。思えば私が商船大学で学んでいた50年ほど前、環境問題は汚染や公害といった側面で語られていました。卒業して海運会社に入社した前後にはオイルショックで「省エネ」が新しい言葉として登場、その後は地球温暖化、環境負荷、飽食など、言葉を替えながら、環境問題は人の行動様式に変容を迫ってきました。最近では「持続可能」がキーワードとなり、企業により具体的な行動を求めるSGDs、ESGなどが盛んに語られるようになっています。

 これからの産業社会では、環境問題と切り離された形での技術開発や資源の消費は許されないでしょう。本学における学術研究も直接、間接に環境問題とリンクする場面が多くなっているものと思います。環境問題を解決するにあたっての海洋大の立ち位置について、議論の余地はさほど大きくないでしょう。皆さんが在学中に学んだ技術や実務方法論が、人類社会の中で活かされることを期待しています。

 此処で、発明家であり今日のトヨタグループの礎を築いた豊田佐吉の言葉を紹介します。『そこの障子を開けてみよ。外は広いぞ』。短く簡素な言葉で、丁寧な説明は必要ないと思います。現状維持に満足することなく、常に次の扉を開けて可能性にチャレンジせよ、とまで読みたいものです。

 この機会に先輩として皆さんに伝えておきたいことがあります。それは「現場主義」です。物事は現場で起きています。何が起こったのか、どうなっているのか、まずは先入観念や思い込みを退け、現場の事実に基づいて状況を正しく判断することが大切です。その上で適用すべきセオリーを正しく選んで駆使し、問題への対応策を案出して果敢に実行する、これが私の意味するところの「現場主義」です。

 本学の前身である東京商船大学の寮歌「ああ月明は淡くして」に、「汐の香浴びし海の子が、慨世の意気天を衝く」という一節があります。私の好きな一節ですが、後段は「慨世の意気」、すなわち世の中にある矛盾や不条理に憤慨すること、「天を衝く」、空をも突き抜くばかりだ、というところでしょうか。これを青年の心意気は天にも届け、と解しても大きな齟齬はないでしょう。さて前段の「汐の香浴びし」ですが、潮を浴びるには海や船の現場に出なければなりません。潮を浴びた海の子とは海洋大の卒業生そのもの、実習や実験で鍛えられた海洋大の卒業生は現場に赴くことを厭わない筈です。

 東京水産大学の同窓会は楽水会です。また海洋会は東京、神戸の両商船大学をまたぐ同窓会組織です。楽水会、海洋会ともに大正年間の創立であり、それぞれ100年を超える歴史を刻んできました。旧高等商船学校、旧水産講習所の系譜を引く本学はこの長い歴史の中で、数々の高度な研究の成果を社会に提供するともに、有為の人材を数多送り出してきました。皆さんは海洋大の出身であることに誇りを持ち、今後は楽水会、海洋会の正会員として大学や後輩学生を支援頂くよう、お願いします。また、困ったり悩んだりした時、海洋会や楽水会を訪ねてみて下さい。解決のヒントが見つかると思います。

 皆さんの門出にあたり、心からお祝いするとともに、社会で、学究の場で、益々ご活躍されることを祈念しております。本日は誠におめでとうございました。

  令和5年3月24日            
         一般社団法人海洋会 会長 平塚 惣一  

 上記の他にも、関係企業?機関の皆さまから祝電など様々な形でご祝意をいただいております。
 この場を借りて、厚く御礼を申し上げます。

                                        東京海洋大学            

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